アルデンテ失敗

今日の夕食は,ショートパスタにラタトュイユ風ソースを絡めたものを作って食べたのだけど,近年稀に見る残念な出来だった.
ソースは文句の無い仕上がりだったのだけど,問題があったのはパスタの方で,茹で過ぎて麺が柔らかくなってしまったのである.
私がパスタを頻繁に作る理由は,調理の単純さに拠るところが大きい.麺の茹で加減と塩味にさえ気を付ければ,他は適当に作っても大抵は美味しく出来る.
逆に,他の部分にいくら気を使っても,塩を入れ過ぎると食べられたものでなくなるし,パスタに芯が残っていないとちっとも美味しくない.


パスタの袋を見ると,大体のものには,適切な茹で時間が書いてある.しかし私は,あそこに示された時間を参考にしてパスタを茹でたことが無い.というか,茹でる際に時間を計った経験すら一度も無い.
そもそも,あそこに書いてある茹で時間というのは,本当に正確なのだろうか.袋には茹で時間と,パスタを茹でるのに使用する水の量しか書いていない(それすらも書いていないものもある).使用する鍋の容量や材質は書かれていないし,調理する部屋の室温も書かれていない.
特に一度パスタを入れてから再沸騰するまでの時間は,トータルの湯で時間や仕上がりに相当な影響を及ぼしていると思うのだけど.
こんなケースもあった.チキンラーメンの袋に,鍋調理ならば熱湯で1分と書いてあるのだが,沸騰したお湯の入った鍋に麺を投入したところ,再び沸騰するまでになんと2分近く(正確には測っていないけど)も掛かったのだ.時間など測っても目安にもならず,1本取って試食して判断するのが,一番確実だ.




複数の過程からなるある一連の作業を,それなりの完成度でこなそうとした場合,特に,その作業工程が長く,完了までに多くの手間や長い時間を要する場合,“ある程度の手抜きが許容されるパート”と,“絶対に手を抜いてはいけないパート”を見極めることが,とても重要であると思う.
上記の例でいうならば,パスタの茹で加減と完成品の塩加減には最新の注意を払うべきである.麺を茹でる傍らでソースの濃度調整に気を配るだとか,最後の味見を端折って温かいうちに盛り付けようとするといった行為は,本末転倒であり,そういった作業を繰り返していると,失敗する確率は上がるだろう.
些細なこと,大した影響を及ぼさない要因に対してはやけに気を配る割りに,もっと致命的な要因に対して無頓着である,といったケースを見かけて,着眼点がおかしいのではないかと思うことがしばしばある.