森博嗣講演会レポート

一昨日、聴いてきました。倍率6〜7倍だったということで、参加出来たのは幸運だったと思います。柄にも無く張り切って、会場45分前から講談社前に並んだりしてましたが、おかげで結構良い席が取れました。ちなみに、本人の姿を見たのは今回が初めて(そして、おそらく最後でしょう)。
90分間の公演だったのですが、その内3分の2以上は、今までエッセイやブログで触れられて居た内容だったと思います(自分の知る限りでも)。終盤になってから、やや難解な内容(過去の作品に関する言及)や、これからの展望(その内ブログで明かされるでしょう)が少し語られて、その辺が見所だったと思うのですが、ディープな内容や核心っぽい部分はさらりと流されたりして(理系の教授にありがちな話し方かと思われる)、全体的にはかなりライトな公演でした。


公演のタイトルは“森博嗣というメーカ”。内容は主に、創作物を商品として世に送り出す立場からの小説論、という感じでした。
最初は可能な限り書き出そうと思ったのですが、思い直して前半60分くらいの内容(小説、創作に関する話)を大幅に割愛。特に気になった後半30分の内容(過去の作品に関する言及)を書くに留めました。ほとんどスライドの書き写しです。一部私の言葉と想像で補っている部分もあります。実際はやや細かい捕捉を加えて分かりやすく話してました。


これ以降、重大なネタバレを含むので注意。


S&Mシリーズ上級編(全10作品についての言及があったのですが、自分自身あまり理解出来なかったので、分かり易い部分をピックアップ)
冷たい密室と博士たち西之園萌絵の車は右ハンドルのフェラーリ(記述から読み取れる)
詩的私的ジャック→Fへの伏線(元々はFの前の作品として書かれたので、その名残。例、儀同世津子の初登場)
夏のレプリカ→記述はアンフェアか?(森博嗣曰く、アンフェアでは無い)
・今はもうない→森林鉄道の存在と無線のコールサインが、作品中の年代を知るヒント。
・有限と微笑のパン→犀川は本当に気づかなかった?⇒見えなかった。


Vシリーズ上級編(上に同じ。これも特に気になったものをピックアップ)
 Vシリーズは“キャラ萌えの皮を被った本格。そして、既存のミステリィに対するアンチ”
黒猫の三角→アリバイへのアンチ
人形式モナリザ→動機と背景へのアンチ
恋恋蓮歩の演習→ロマンスへのアンチ
捩れ屋敷の利鈍→館ものへのアンチ
赤緑白黒→動機へのアンチ


Gシリーズ上級編(上と同じ)
 Gシリーズは、“リアリティの追求。ミステリィにありがちな数々のシチュエーションの普通化
φは壊れたね叙述トリックの普通化
τになるまで待って→館ものの普通化
λに歯がない→本格の普通化
ηなのに夢のようミステリィの普通化(普通はこうなるだろ!という形に仕上げた、だそうです)
言われてみると、なるほどなぁ、という感じ。Gシリーズの普通っぷりは異常。


Xシリーズ上級編
イナイ×イナイ→日本的ミステリィの懐古


あとは今後の展望に関する話とかあったのですが、近いうちにブログなりなんなりに載りそうなので割愛。
と、大体こんな感じでした。公演会後に質疑応答があったのですが、これも大幅に割愛。
あと公演中に地震があって、それを機に地震に関する言及有り。最近作られた建物は阪神大震災級の地震にも耐える、地震への対応策に関するアイディアは30年前から進歩していない、とのこと。