別れたのは果たして何時のことだったか


以前から,実家の母との電話のやりとりの中で
死期が近いのかと,薄々感づいてはいたことなのだけど.
今朝,実家で飼っていた猫が死んだとの連絡が来た.
死ぬ間際,少し苦しんでいたらしい.
メス猫で,確か,13年と8ヶ月くらいだったはず.
老衰だったのか,やや体重が多かったのが原因か,よく分からない.
最後に会ったのは,昨年の春頃.
その時は随分大人しかったと思うけど,そんなのは何年も前からのことだった.
親しい人や,近い親類と死別した経験が無いので
死に際を看取れなかったことが,果たして幸だったのか不幸だったのか
それが一番分からない.
訃報はメールで伝えられただけ.特別悲しい気持ちにはなっていない.
今度実家に帰った時には,陰も形も無くなっているはず.
痕跡は,壁や柱に付けられた無数の傷跡くらいだろう.
それを見て,少し寂しくなるかもしれない.
もし,彼女が死ぬ場面に居合わせていたとしても
大して悲しくならなかっただろう.自分は,そういう人間だと思う.
それに,おそらく彼女も,そんなことを望まなかったはず.
実家に居たときも,自分には,特別懐いてはいなかった.
たまたま同じ家に居て,同じ時間を共有した気分になっていただけ.
彼女にとっては,自分など眼中に無かったのかもしれない.
自分が小学生くらいのころは,懐かれようと苦心していたはず.
目先の,物理的に近い位置にいる時ほど,彼女を意識し,好かれようと躍起になっていた.
横顔や,後ろ姿を追いかけるのが好きなのかもしれない.
こうやって書くと,随分危険な響きだけど.
やっぱり猫が好き.猫じゃないと駄目.